ホンダ小型スポーツカーSシリーズの新型として、または1996年に発売された軽自動車規格のオープンスポーツカーのビートの再来として人気を集めるホンダ S660(エスロクロクマル)。 ホンダ S660は2015年に発売され同時に660台限定生産の特別仕様車「コンセプトエディション」が登場。そして今年の2017年5月にも受注期間を限定した特別仕様車「ブルーノレザーエディション」が登場し注目を集めています。
特別仕様車は言い換えればメーカー純正のカスタマイズです。オーナー自身が行うカスタマイズよりも質やコストのすべての面において完成度が高いのは言うまでもありません。
とはいえ、かつて販売されていたSシリーズの先代であるホンダ S2000やホンダ ビートを街で見かけると、オーナーの好みにあわせたカスタマイズやチューニングが多数あり、自分だけのクルマに仕上げようと考えている方が多いのではないでしょうか。
今回は特別仕様車を除いたホンダ S660のベーシックな基本グレードについて焦点を当てて解説します。
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ホンダ S660 概要
ホンダ S660は、ホンダ小型スポーツカーSシリーズSシリーズの第5弾として、2015年に発売を開始した2シーター・オープンスポーツの軽自動車です。
ホンダは1962年に今の東京モーターショーにあたる全日本自動車ショーで小型スポーツカーS360を発表。以降、S500、S600、S800、S2000と伝統的にホンダの小型スポーツカーにはSの名を冠し「Sシリーズ」としています。
ホンダ S660も車名の通りS名を冠しSシリーズの第5弾にあたる新型とされていますが、レイアウトが軽自動車規格のオープンスポーツカーのホンダ ビートと同じくMRレイアウトを採用してりるため、先代のホンダ S2000までFRレイアウト採用していた従来のSシリーズ系譜とは大きく異なります。
従来のSシリーズもビートも小型で走りを楽しむためのスポーツカーとしての共通項があるため「最新のSシリーズ」であったり、「ホンダ ビートの再来」といわれても従来のファンは違和感を感じることはありませんが、軽自動車から構造がMRレイアウトでということから、「ホンダ ビートの再来」や「「ホンダ ビートの後続モデル」というイメージが支配的です。
基本グレードは「α」と「β」の2種
ホンダ S660のグレード構成は「α(アルファ)」と「β(ベータ)」2種です。それではスペックから順にαとβの違いをみてみましょう。
ホンダ S660 スペック
ホンダ S660の基本スペックはαとβとも共通で違いはありません。ただしそれぞれのグレードに搭載されるトランスミッションがMTとCVTの違いによって車体重量と燃費が異なっています。
スペック表
駆動方式 | MR | |
---|---|---|
トランスミッション | 6MT | CVT(パドルシフト付) |
全長 | 3,395mm | |
全幅 | 1,475mm | |
全高 | 1,180mm | |
ホイールベース | 2,285mm | |
車体重量 | 830kg | 850kg |
乗車定員 | 2名 | |
エンジン形式 | 660cc 水冷直列3気筒 DOHC インタークーラーターボ | |
エンジン型式 | S07A | |
最大出力 | 47kW(64PS)/6,000rpm | |
最大トルク | 104N・m(10.6kg・m)/2,600rpm | |
燃費(JC08モード) | 21.2km/L | 24.2km/L |
フロントブレーキ | ディスク | |
リアブレーキ | ディスク | |
タイヤサイズ(前) | 165/55R15 75V | |
タイヤサイズ(後) | 195/45R16 80W |
MTよりCVT搭載車のほうが20kgほど重くなっていますが、燃費はMTよりCVTのほうが1リッターあたり3kmほどよく、1.5割ほど燃費が良い計算になります。
ダイハツ コペンと比較
ダイハツからは、軽自動車規格のオープンスポーツカーのダイハツ コペンが販売されています。ダイハツコペンと比較すると、ダイハツ コペンがFFレイアウトなのに対し、ホンダS660はMRレイアウトであることに加え全高が低くなっています。
数値でみるとダイハツ コペンに比べホンダ S660が10cmほど低くなっており、外見もスポーツカーらしくシャープで精悍です。またホンダ S660は、車体の全高に加え、シートの着座位置も低くなっています。
一般にドライバーの視点が高いほうが眺望性や駐車場なのでの取り回しに有利とされていますが、地面を舐めるような低い視点での運転はスポーツカーの醍醐味のひとつですので、ホンダ S660の場合は美点といえます。
オープンエアにひと工夫
ホンダ S660は、頭上の幌を手動で取り外すことで開きます。幌開閉は簡単にできるように軽量にできた幌を巻くように取り外すことから、ルーフ開閉部分(方法)は「ロールトップ」と呼ばれます。このロールトップは軽量にできていますが、積雪時でも耐えられるレベルの強度を確保しています。
さらに屋根を開けてオープンエアが楽しめるホンダ S660には、さらなる工夫がなされています。
ドライバーのアイポイント(目の位置)とフロントルーフレール(フロントの窓の枠の頂点)間の距離をS2000同等まで拡張し、乗用車サイズのオープンカーと同等の開放感を実現しています。また座席の後ろにあるパワーリアウィンドウ(昇降式のリアセンターガラス)の採用で、開閉によって車内に流れる風をコントロールできるようになっています。
ホンダ S660は、視覚にも肌で感じる風にも配慮したオープンカーといえましょう。ロールトップとパワーリアウィンドウの仕様はαとβとも共通です。
インテリア(内装)
ホンダ S660のαとβの違いは、主にインテリアに見られます。共通部分もありますがαとβに比べると、αはβに比べ本革やメタル調のアクセントをつけて高級感を演出しています。
メーター
メーターはαとβともに共通で、タコメーターをメインとちて中央にデジタルスピードメーターを配したスポーティーな単眼のデザインとなっています。
タコメーターのレッドゾーンの表示は7000rpmからで最大9,000回転まで刻んでいます。ホンダ S660のレブリリミッターはMTが7700rpm、CVTが7000rpmで作動しますので、タコメーターが9,000回転まで刻んでいるのは、ややオーバーな印象も受けますが、サーキットでスポーツ走行を行う方であれば、レブリリミッターの解除や調整をするかと思いますので表示に余裕があるのはホンダ S660のキャラクターにあっていると言えるでしょう。
インパネとダッシュボード
無駄を配したコクピットで、インパネからコンソールに伸びる仕切りがあり、運転席を助手席を適度に隔てドライバーがスポーツドライビングに集中できるタイトなデザインになっています。
αのステアリングホイールが本革巻きで、ステアリングガーニッシュがガーボン調となっており、アクセントで高輝度シルバー塗装で高級感のあるスポーティーなテイストとなっています。
またαにはクルーズコントロール機能があるため、ステアリングホイール右側には、クルーズコントロールのスイッチがあり、左側のオーディオリモートコントロールのスイッチとちょうどシンメトリーの位置に配置され高級車のような印象です。
ホンダ S660 βのステアリングホイール
βのステアリングホイールはシンプルな樹脂製となっています。またβにはクルーズコントロールがないため、βのステアリングホイールは左側のオーディオリモートコントロールのスイッチのみ配されます。
MTシフトノブ/CVTセクトレバー
αの場合は、シフトノブ(CVTはセレクトレバー)が本革巻となっています。βの場合はステアリングホイールと同じく樹脂製となっています。
αには随所にメタルの輝き
ホンダ S660 αには、ペダルがステンレス製のスポーツペダルになるほか、高輝度シルバー塗装で随所にメタル調アクセントを入れ、高級感とさらなるスポーティー感の演出をしています。
シート
ホンダ S660のシートは、クルマの挙動をダイレクトに感じ取れるゴーカート感覚を追求するために、ヒップポイントを極限まで低くし、さらにヒップポイントからペダルまでの間隔を長くとることで、ペダルを前に踏み込むスポーツドライビングが堪能できる姿勢になっています。
ホンダ S660 αのシート
ホンダ S660 αのシートは素材に本革とラックス・スェード素材を使用しています。シートカラーは「スポーツレザーシート(ブラック)」と、さらに車体色がプレミアムスターホワイト・パールであれば、運転席がライトグレーで助手席がダークグレーの「アシンメトリーカラースポーツレザーシート」も選択できます。
ホンダ S660 βのシート
ホンダ S660 βのシートはメッシュとファブリック素材の「スポーツファブリックシート(ブラック)」のみとなります。
エクステリア
ホンダ S660のボディーカラーはαは全6色から選べ、βはうち3色となっています。またホンダ S660にはアルミホイールが標準装備でαとβではデザインが異なります。
ボディーカラー(車体色)
ボディカラー | α(アルファ) | β(ベータ) | 有料色 |
---|---|---|---|
プレミアムスターホワイト・パール | 〇 | 〇 | ★ |
アドミラルグレー・メタリック | 〇 | 〇 | |
プレミアムミスティックナイト・パール | 〇 | 〇 | ★ |
プレミアムビーチブルー・パール | 〇 | × | ★ |
カーニバルイエローII | 〇 | × | |
フレームレッド | 〇 | × | ★ |
※★印が入った有料色は、32,400円(消費税8%抜き 30,000円)高となります。
アルミホイール
ホンダ S660のアルミホイールはαとβで、それぞれに異なるデザインのものが装着されています。ホンダ S660 αに装備されているアルミホイールは、部分的に黒く塗装しスポークの輝きを強調するスタイリッシュな見た目となっています。
走行性能
スポーツカーにとってもっとも大事な走行性能です。軽自動車の660ccのエンジンでは、最高速度などの絶対的なスピードは大排気量車に及びませんが、ホンダS660は非力な軽自動車ながら、エンジンの使い切る操る楽しさを堪能できる高い走行性能を誇ります。
エンジン
ホンダ S660のエンジンはN-BOXシリーズをはじめとするNシリーズに搭載されているS07A型ターボエンジンをベースに、新設計のターボチャージャーを採用した改良型を搭載しています。
カタログの数値上では、最大出力が47kW(64PS)/6,000rpmで、最大トルクが104N・m(10.6kg・m)/2,600rpmと、ターボエンジンを搭載したNシリーズと変わりはありませんが、エンジン特性は660ccのエンジンを使い切って走るスポーティーなテイストに仕上がっています。
またグレードごとにエンジンの違いはありませんが、トランスミッションがMTとCVTではレブリミット(エンジンの回転数の上限)が異なり、MTが7700rpm、CVTが7000rpmとなっています。
6MT | CVT(パドルシフト付) | |
---|---|---|
エンジン形式 | 660cc 水冷直列3気筒 DOHC インタークーラーターボ | |
エンジン型式 | S07A | |
最大出力 | 47kW(64PS)/6,000rpm | |
最大トルク | 104N・m(10.6kg・m)/2,600rpm | |
レブリミット | 7700rpm | 7000rpm |
MRレイアウトのならではの冷却機能
エンジンの搭載位置はホンダ S660の特徴でもある横置きMRレイアウトです。そのためタイヤにかかかる前後重量バランスが45:55と最適な重量バランスとなっており、痛快なハンドリングを実現していますが、通常の乗用車のようにエンジンが前ではなく後ろに搭載されたMRレイアウトは、エンジンルーム内の温度が上昇しやすくなります。
ホンダ S660は、ロールバー両側のサイドエアインテークと、床下のセンターアンダーカバーに設けたNACAダクトで、独自の冷却対策をとっています。
トランスミッション
ホンダ S660のトランスミッションは、6速マニュアルとパドルシフト付CVTから選べます。
軽自動車初の6速MT
ホンダ S660のMTは、軽自動車では初の6速マニュアルトランスミッションを搭載しています。
1~5速をクロスレシオとし加速の良さを追求するとともに、5~6速はワイドレシオ化してあります。スポーティーな走行を楽しめるとともに、高速巡航時の快適性に運転できます。
変速感があるパドルシフト付CVT
ホンダ S660のCVTは、アクセルペダル操作に対してよりダイレクトなのフィーリングにするために、専用セッティングが施されています。またにステアリングホイールにはMT感覚の7段のシフトチェンジができるパドルシフトが搭載されています。
SPORTモード(CVTのみ)
CVTにはSPORTモードが搭載してあります。SPORTモードは、高い応答性能により素早いアクセルペダル操作にも応えるレスポンスが得られ、力強く伸びのある走行を可能にしているモードです。郊外や山坂道での走行に適しています。
軽自動車初のアジャイルハンドリングアシスト
ホンダ シビックタイプR(FK2型)などにも搭載されるハンドリング支援システム「アジャイルハンドリングアシスト」を、ホンダ S660は軽自動車で初めて採用。
旋回に入る際に高度にブレーキを制御し、車両が曲がる際の応答や旋回中に車両が応答遅れなく曲がれるようにし、旋回が終わるまでクルマの姿勢を安定させます。
価格とエコカー減税
ホンダ S660の本体価格はMTとCVTともに価格は同じでグレードにより価格が異なり、αが218万円(税込)、βが198万円(税込)となっています。
エコカー減税はCVTのみの平成27年度燃費基準、+10%達成車に適応です。所得税が20%軽減、重量税25%軽減となっています。
ホンダ S660 α(アルファ) |
ホンダ S660 β(ベータ) |
|||
---|---|---|---|---|
トランス ミッション |
MT | CVT | MT | CVT |
価格 | 218万円 | 198万円 | ||
平成27年度 燃費基準 |
達成車 | +10%達成車 | 達成車 | +10%達成車 |
エコカー減税 取得税 |
軽減なし | 20%軽減 | 軽減なし | 20%軽減 |
エコカー減税 重量税 |
軽減なし | 25%軽減 | 軽減なし | 25%軽減 |
カスタマイズするならβか?
ホンダ S660のαとβを比較すると、ハンドルやシフトノブ、アルミホイールといったカー用品店で社外品と交換可能な比較的ポピュラーなアイテムの違いしかないことに気づきます。
走行性能に違いがあるわけではないので、カスタマイズする予定があるのであればαより20万安いβを選び、カスタマイズ用の部品に回すのもよいでしょう。ただし、クルーズコントロールがαにしかつかない点、そして選べる車体色がβは少ない点にには注意が必要です。20万安いという理由で欲しい車体色を見送ったり、MTが欲しかったにもかかわらずエコカー減税を理由にCVTを選ぶのは、趣味色が強い車種だけにあとあと後悔します。
今回はベーシックな基本グレードのみ解説しましが、購入のタイミングによっては好みの装備を装着した特別仕様車が登場するかもしれません。もし好みに合致した特別仕様車が登場したら、カスタマイズの予定があっても特別仕様車の購入も検討してみましょう。