6月9日朝日新聞デジタルは、三菱自動車は2020年をめどに新たな電気自動車(EV)を販売する検討に入ったと報じました(参照記事)。
ekシリーズをEV化する方向で検討
記事によると三菱自動車の益子修社長が朝日新聞の取材に明らかにしたもので、軽自動車「ekシリーズ」を18年にフルモデルチェンジし、20年をめどにEVも追加する方向で調整するとのことで、現在販売している同社の電気自動車「三菱 i-MiEV(アイ・ミーブ)」の後継車としての位置付けとなるとしています。
現行の三菱 i-MiEVはリア・ミッドシップを三菱 i(アイ)をEV化
三菱 i-MiEV(アイ・ミーブ)は、三菱 i(アイ)をEV化したもので、注目すべき点はエンジン(モーター)の搭載位置。通常の乗用車はフロントにエンジンを搭載するのですが、三菱・i(アイ)はエンジンを後席と後輪軸の間に搭載するリア・ミッドシップを採用しています。リア・ミッドシップを採用することでホイールベース(前輪軸と後輪軸の距離)は既存の軽自動車としては最長の2,550mmと軽自動車では最長で、次点は現在の軽自動車で販売トップのホンダ N-BOXの2,520mmとなっています。
ホイールベースが長いことをロングホイールベースと呼びます。ロングホイールベースのメリットは直進安定性に優れることですが、逆にデメリットは小回りが難しくなりことです。ところが三菱 i(アイ)は、フロントにエンジンが無いことから前輪の切れ角を大きく取れるため、ロングホイールベースにも関わらず最小回転半径は4.5mと、三菱・i(アイ)よりホイールベースの短いホンダ N-BOXと同じ最小回転半径となっています。
またリア・ミッドシップを用いると室内長が長くとれるのも特徴。三菱・i(アイ)は先代がないため比較することができませんが、近年、フルモデルチェンジでフロントからリアにエンジンの搭載位置を変更した3代目のルノー トゥインゴ(日本販売は2016年9月から)は、フロントにエンジンを搭載した2代目と比べボディーの全長を100mm短縮しながらも室内長は130mm延長させることに成功しました。
リアエンジンと聞くと2座席の本格的なポーツカーをイメージすることが多いかと思いますが、意外にも軽自動車やコンパクトカーでは実用性を重視したパッケージ手法としても用いられています。
新型の電気自動車はFFレイアウトが濃厚
三菱 i-MiEV(アイ・ミーブ)は、リア・ミッドシップの三菱 i(アイ)をEV化したものですが、今回の報道によると三菱のekシリーズをEV化するとのことです。三菱のekシリーズは軽自動車では一般的でのレイアウトであるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトになります。新型もフロントに電気モーターを搭載するレイアウトになると思われます。
販売面では新型の電気自動車は三菱 i-MiEV(アイ・ミーブ)の後続モデルにあたりますが、自動車の構造は従来の三菱 i-MiEV(アイ・ミーブ)とは全く異なる新型車としてデビューすることが濃厚です。
電気自動車がお手頃になる日がやってくる?
三菱のeKシリーズは三菱自動車の水島製作所で生産し、グループ会社の日産にも供給。日産ではデイズとして販売しています。
三菱自動車の販売店と日産の販売店で(生産面での)同型車が売ることができるため、生産台数を増やせることから1台あたりの販売価格を抑えることができます。よって18年にフルモデルチェンジ予定の次期eKシリーズも日産に供給し販売することが予想できるます。また新型電気自動車も日産の販売店で販売されることでしょう。
近年では購買や開発面においても、三菱自動車と連合を組む日産、そしてルノーとのグループ内での部品の共通化も進んでいます。ちなみに三菱 i(アイ)に搭載の3B2型エンジンの排気量を拡大し改良した3B21型エンジンが、3代目のルノー トゥインゴに採用されています。
またグループ内の3社はいずれも電気自動車に注力している背景があり、日産は2016年11月にガソリンエンジンで発電する電気自動車のノートeパワーを発売。そしてルノーも実は3代目のルノー トゥインゴの開発当初から電気自動車モデルがラインナップがされていたのです(注:電気自動車モデルの実車は未発表です)。
現在販売してる三菱 i-MiEV(アイ・ミーブ)は、補助金を利用しても販売価格が200万円を超え、軽自動車としては高価で手が届きにくいと言わざるを得ません。電気自動車の開発と生産でネックとなる電池などの主要部品を、3社で共通化させコスト削減が進めば、2020年にはお手頃な価格で電気自動車が買えるようになるかもしれません。